園館に問われる存在意義、その中で働く飼育員の葛藤と、現場の課題解決に向け飼育員に出来ること。

こんにちは。そえじまです。
私は、2012年2月から飼育員として7年と少しの間、水族館で働いていましたが、色々と思うところがあり2019年5月末で水族館を退職致しました。
現在は、飼育とは全く違う職業に就き、全く違う業界で働いています。

これからお話する内容については、私の働いていた園館内で起きていた事ではないこと、そして、日本の全ての動物園水族館に当てはまることではないという事だけ、はじめにお伝えしておきます。

以前から、動物園や水族館で働く飼育員たちの多くが雇用が不安定であったり、待遇が悪いことに対して、世間で何故「仕方がない」とされているのか疑問に思ってきました。

たしかに、大変人気の職業のため、どんなに低い賃金で募集を出したとしても誰かしら応募してくる状況です。
しかしほとんどの人が10年以上長くは続きません。5年を過ぎるまでは皆一生懸命頑張るのですが、30歳に差し掛かる頃から将来に不安を感じるようになり、次々と辞めて行ってしまいます。

上は40~50代の中間管理職、現場で重要な役割を担うはずの中堅はスカスカ、下は20そこらの新人たち。
やっと育ったと思ったら辞めていってしまう。そんな状態が長く続いているように見受けられますが、果たしてこのままでいいのでしょうか。
このような状態で、自然環境や飼育動物の持続可能性について議論していけるでしょうか。次の世代を育成できるでしょうか。飼育技術の発展を望めるのでしょうか。

辞めていく飼育員の半数以上は、はじめから早々に辞めるつもりで飼育員になったわけではないはずです。
好きな仕事のためならお給料なんか低くても頑張れると、多少のことなど犠牲にして精一杯働くつもりで業界へ入ってきた人が多いと思います。

希望に胸膨らませ業界へ入っていく若い人もたくさん見てきましたし、心も体もボロボロになって辞めていく人もたくさん見てきました。

不安定な雇用形態でしか雇ってもらえないのは、飼育員の自己責任でしょうか。
本人の頑張りが足りない事だけが、正社員になれない理由でしょうか。
好きな仕事をしている人間が賃上げを要求する事は「わがまま」なのでしょうか。
ひとりの労働者として、最低限の権利を行使する事すら許されないのでしょうか。

私はそうは思いません。

しかしこの問題には、現在働く飼育員ひとりひとりがいち労働者としての権利を守る意識を持ち、おかしいことには「おかしい」と気付き、声を上げる勇気と、どのようにすれば問題を解決していけるのか、といった知恵も必要になると考えます。

また、飼育員として動物園水族館で働くなかで、本来であれば教育普及や調査研究などにも力を注ぎたいが飼育のルーティンに追われパフォーマンスやイベントまで多くの回数こなさなければならない状況にフラストレーションを感じている人や、教育普及のための企画を提案してもお金にならないからと却下され不満を感じている人もいると聞きます。(※全ての園館での事象には当てはまる事ではありません)

ここの点に関しては、飼育員も現場としての意見を言うだけでなく経営側の考えを理解し歩み寄る必要があると考えています。

生き物たちの餌を買うには、お金が必要です。
皆さんのお給料を払うには、たくさんの人を惹きつける企画が必要ですし、たくさんの人に来ていただく必要があります。
もしも飼育側から企画を提案するのであれば、動物園や水族館に最初から学ぶつもりで足を運ぶ人など世の中では少数派であるという現実を受け入れた上で提案をする必要があると思います。

世の中がエンターテイメントを求めるのであれば、需要と供給のバランスを考えればたしかにエンターテイメント寄りの企画ばかりが世に出回る事は自然なことかもしれません。

しかし、そんな中でも「動物園水族館としての役割を果たしたい」という志を持って仕事している人にとっては、こんなはずじゃなかったのに何故エンターテイメントに寄った仕事ばかりしなければならないのか、どの様な企画ならば教育など果たすべき役割とのバランスも取れて上へ受け入れてもらえるのかがわからず苦しい思いをしている人もいるかもしれません。

私はもう辞めてしまった人間なので私が今から動物園や水族館のために出来る事など限られていますが、今働いている人にとってなにかお役に立てる事があれば行動していきたいと思っています。

水族館を辞めてから何度かイベントを開催してきましたが、そこで参加者の学生さんあるいは飼育員の皆さんへお話してきた事は全て私が現役で働いていた頃あるいは業界へ入る前に知りたかった内容です。

「知る」ということが身を助けることもあります。
同じ志を持った人と「繋がる」ということが、のちに自分の大きな支えになることもあります。

もしも、いまひとりで悩んだり、苦しんでいる人がいたら、どうか声に出して相談してほしいです。
ひとりではどうしようもないことも、知恵のある人の助けを借りたり皆で考えればなんとか出来ることもあるかもしれません。

業界の未来のこと、自分の将来のこと、園館の存在意義が問われる中で今後どのようにして飼育員として働いていくか、家族のことも大切にしながら仕事も諦めずに続けていけるかなど、皆さんの悩みは人それぞれだとは思いますが、
まずは動物園水族館の運営の在り方に対し少しでも現場の人間として理解を深められるよう、今回初めて講師の方をお招きしたイベントを企画致しました。

日程は2020年2月9日で場所は秋葉原駅周辺。時間は13:00~17:00の予定となっております。参加費は2000円です。
講師の方は、水族館の経営を専門的に研究していらっしゃる方で、普段は経営層向けにお話をされている方です。
今回、経営のことなど何もわからないようなレベルの飼育員でもわかりやすいようにお話をしてくださいます。
飼育員の待遇問題に関しても真剣に考えてくださっている方なので、もしも職場環境や待遇に関して不安を抱えている方がいれば、その辺りの悩みに対しても経営側の視点からアドバイスをいただけると思います。

もしこの時点で予約しておきたい方は私のTwitterアカウント@doltrainerまでDM していただいてもいいですし、正式な告知を待っていただいても構いません。
この話題に関しては、学生たちの関心度がかなり高いため現在学生からの予約はまだ受け付けておりません。まずは優先的に飼育員の皆さんからの予約を受け付けさせていただこうと思っているので、何か不安な点や不明点などありましたらご連絡ください。

イベント詳細に関しての記事は、準備でき次第以下に表示されます。


http://xn--ecko1gi6ni6ib.com/2019/12/30/2020%e5%b9%b42%e6%9c%889%e6%97%a5%e6%97%a5%e3%81%ae%e8%a9%b3%e7%b4%b0%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/

以上、宜しくお願い致します。

この記事をシェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA