今回は、寄せられたお悩みに対しての回答になります。
同じような悩みを抱えていそうな人が多いので、ご本人の許可をいただきこちらブログ記事にて回答させていただくことになりました。
なお、発言の内容は所属する組織とは一切関係なく、私個人のものです。
今回寄せられたお悩みはこちら。
こんにちは。私はとある専門学校に通い、ドルフィントレーナーを目指しています。学校の授業の中で、IMATAの会議の話が出てきました。今年も学校から希望者は参加できるようで、今すごく悩んでいます。
やはり参加して就職に有利になったりするのでしょうか。
また英語も苦手です。
正直学校に入ったばかりでどういうものかもあまりわかっていません。
もしよければ教えてください。
今回は、質問者さんのこのお悩みに、
いち専門学校出身者として、現役飼育員として、そして実際にIMATAカンファレンスに参加してきた人間として、真剣に考えてみました。
しかし、今から言う事は、私の経験上から私個人の主観によってお答えするものなので、どうかそれだけで決断を急がず周りの人にもたくさん相談して、自分で納得した上で決断してください。
まず、私が思ったのは…
今、質問者さんはめちゃめちゃ恵まれている環境にいます…!
学校の先生が引率して学生をIMATAカンファレンスに連れてきてくれる専門学校は、私の知る限りあの某系列の某学校しかありません。(昨年ポルトガルでも現地で先生方にお会いしました。)
IMATAのカンファレンスに毎年学生を連れてくる先生方はとても熱心な方々で、将来ドルフィントレーナーを目指す学生達の未来の事だけでなく、業界全体の先の事もよく見通して考えておられて、私自身まだまだ未熟者なのでその先生方との会話の中から学ばせていただいた事がたくさんあります。
もし仮に私が学生だったとしても、その先生方のいる環境で学びたいと思える程の方々です。きっと周りにも優秀な同期たちがいて、日々刺激を受けられる良い環境にいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、入学してすぐで何もわからない状態で、
「アメリカでカンファレンスあるけど、行く?」
といきなり言われても、数十万単位でお金のかかる事ですし戸惑ってしまう気持ちもわかります。
しかし、飼育員になってからひとりで飛び込んでいくしかなかった私からしたら、希望さえすれば海外で行われるカンファレンスまで先生引率のもと連れて行ってもらえるチャンスがあるなんて、正直とても羨ましいです…
ですが、実際に海外で行われるIMATAカンファレンスに参加する事が金銭的に可能かどうかは各々の金銭状況にもよるでしょうし、借金してまでIMATAカンファレンスに参加すべきとは思いません。
まだまだこれから、ダイビング合宿や潜水士取得、車の免許取得や遠方への水族館実習もあるでしょうし、もし自分で学費を払っている場合その隙間時間にアルバイトをして学費を稼ぐのは本当に大変だと思います。
どちらかと言うと金銭的な問題の方が大きそうな気もしますので、無責任に参加を勧める事は出来ません。
質問者さんはまだ一年生との事ですし、二年次にもきっとまたカンファレンスへ参加するチャンスが巡ってくるでしょう。
まだ何もわかっていないうちに行ってしまうよりは、これから学校生活を送っていく中で自分の方向性を定めながら、二年生になってから参加するでも遅くはないのかなとは個人的には思います。
色々と厳しい現実を知るうちに、入学して数ヶ月で水族館就職を目指す事自体諦めてしまう人もかなり多いと思うので…。
海外での不安は抜きにして、本当に心から「行ってみたい!」と思えたら、行ってみれば良いと思います。
「カンファレンスに参加すると就職に有利になるか?」
に対しての回答ですが、それは
「質問者さん次第」
としか言う事ができません。
しかしこの質問を
「カンファレンスに参加するだけで、就職に有利になるか?」
といった意味で解釈するとするなら、その答えは、
『参加するだけでは、有利にならない」
です。
大切なのは、
カンファレンスに出席して得た経験を、その後どう生かしていくか
だと私は考えているからです。
世界中の海洋哺乳類のトレーナーが集まる場で、何を経験しどんな事を感じたのか。
その経験をこれからどう生かしていけるのか、何に興味を持ち何に取り組んでいきたいと思っているのかなど、カンファレンスに参加して何がどうなったのかはっきりと言えなければ、カンファレンスについて面接で突っ込まれてもあまりアピールポイントにはならないのでは…と私は思います。
IMATAについてあまり詳しく知らない業界人も少なくないですし、IMATAに参加してるから偉いという事でもありません。
先生が引率して連れて行ってくれるものならただの学生の海外研修としか思われないかもしれませんし、アピールできるとするなら自主性や勤勉性など、自分自身の人間性についての部分などではないかなと個人的には思います。
就職するまでがゴールになってしまう専門学生って結構多いので、飼育員として働き始めてからのその先の目標を持つという事は、とても大切なことだと思います。
逆に、「自分は将来どんな飼育員となりどう働いていきたいのか、そのビジョンをしっかりと固める事が出来れば、有利になり得る」
という事になります。
((あくまで、なる「かも」しれない。という事です))
そのビジョンを考える時に、もし質問者さんが海外で行われるカンファレンスに参加し、広い世界を知る事が出来ていたとしたら、広い世界の幅広い選択肢の中から一番自分の向かっていきたい方向性を選び、目標を定める事が出来ます。
もし日本の水族館事情しか知らなければ、自分の知る世界もその範囲の中に留まってしまうでしょう。
カンファレンスに参加すれば、今まで想像もしなかった未知の世界を知る事が出来たり、それによって視野を広げる事ができると思います。
また、自分の頑張り次第では動物園水族館や動物に関するあらゆる情報を、世界中から収集する事も出来るようになれます。
これはとても素晴らしい事だと思います。
「英語ができないから不安」
という思いももちろんあると思います。
その気持ちは私もこれまでずっと抱えてきましたし、ものすごく気持ちはわかります。
「英語が出来なきゃどうせ意味も理解できないだろうし、行く意味ないんじゃないか。」
「たくさんお金を払うのに、この経験を価値あるものに出来なかったらどうしよう。」
カンファレンスに実際に参加してみる事を決断するまでは、ずっとこんな事で悩んでいました。
ただ、私が実際に参加してみて今思う事は、
「もっと早く挑戦してみればよかった」
という事です。
英語がそれほど得意でなくとも、今どき翻訳アプリもありますし、全部動画に撮っておいてあとから翻訳に頑張って取り組めばどうとでもなります。
先生が引率してくれるなら、多少はその点もフォローしてくれるでしょう。
とにかく、行って、肌で感じる事が大事…!
まだ学生ですから、お金さえあるなら軽い気持ちで行ってみるのも良いんじゃないでしょうか。
飼育員として働き始めてからでは、なかなか長期休暇を取って参加するというのも難しくなるかと思いますので、どうしても気になるのなら今年か、もし来年もチャンスがあるのなら来年に行くのでも良いと思います。
ただそれが直接就職へ結びつくかというところは、本人の頑張り次第になるかと思いますので自分でしっかりと考えて決断する必要があるかと思います。
国際感覚をもつ
ということ。これは今一番日本の飼育員に求められている事のうちのひとつなんじゃないかと思っています。
ここから先に書くことは、かなりデリケートな問題になりますので私の発言については私の所属する組織とは何も関係がないことを先にお伝えしておきます。
私個人が勝手に感じたことになりますので、そのつもりでお読みください。
特にイルカの件で、日本は世界から孤立し始めているように思いますが(イルカの飼育に関して日本が抱えている問題については各々調べてください。)
「日本には日本の事情がある」「英語が出来ないから海外には行けないし、海外の人とは話せない」
と消極的な姿勢を保ち、自分達の安全地帯の中に閉じこもったままでは、この先状況が悪くなる事はあっても良くなる事はないと思っています。
私が偉そうに言えた事ではありませんし、こんな事を言うのは悲しいのですが、
現在日本の水族館で働く若手飼育員達の中で、今世界中から問題視されているイルカ関係の問題について当事者意識を持ち真剣に考えながら働いている人が、または就活中の学生が、果たしてどれだけいるんでしょうか。ちょっと…疑問です。
今後どういった方針で水族館を運営していくべきか、そういった問題にまで一飼育員が踏み込んでしまうのはたしかに行き過ぎなのかもしれませんが、せめて、世界が今イルカの件に関してどういった目で日本を見ているのか、イルカに関わる飼育員もしくはそれを目指す学生なら、せめて知ろうとする姿勢、そしてまずはひとつの意見として受け止める姿勢が必要だと思います。
違う意見を持つ人とも触れ合い会話をしてみない事には、お互いに理解が深められる事も永遠にないと思いますし、学生のうちからそういった機会を持って国際感覚を身につけられるというのは全員に与えられるチャンスではないので、個人的には行けるチャンスがあるのなら是非海外へ行って「経験」という誰にも奪われない宝物を持って帰ってきて欲しいなと思います。
とにかく
勇気ある一歩を踏み出す事を怖がらないで!!!
この一言に尽きます。
時間は無限大にはありませんし、人間いつ死ぬかわかりません。
挑戦したいと思った事には挑戦したいと思った時にすぐ挑戦!
後悔のないように生きてほしいなと思います。
といった感じで回答させていただきましたが、質問者さん、いかがでしたでしょうか。
同じ悩みを持つ方も多いと思いますので、私自身の経験を交えながらお話をさせていただきました。少しでも良い参考となっていれば嬉しいです。
何かあればコメント欄か、TwitterのDMから受け付けております。
さあ、私の飼育員人生もあと1ヶ月です〜
では、さよなら!
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